LIBERTEーー君に
ビアンカは詩月の口に、錠剤をねじ込み、詩月の背をさすった。

「心配……しすぎだ……緒方……」

詩月は言うとホッと、ひと息ついてミヒャエルの胸に倒れこんだ。

「おい、詩月!?」

ミヒャエルは咄嗟に詩月を呼んだが、ユリウスもエィリッヒも落ち着きはらっている。

「ミヒャエル、心配ない。そのまま、そっと横に寝かせて休ませれば、落ち着く」

「本当に大丈夫なのか? ビアンカを緒方とーー」

「久しぶりに満足のいく演奏ができたんだろう。それに、よほど緒方くんと演奏したいんだろう」

ミヒャエルはグッタリして横たえている詩月を見て、はーーあと長いため息をついた。

「不器用すぎるだろう、ホント。腱鞘炎でまともに弾けないんだぜ、その緒方は……つい、4月まで嘆いて愚痴って、そこでワインあおって、鬱ぎこんでいたんだ」

ミヒャエルは詩月がワインを飲んでいた席を指さして、再びため息をついた。
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