LIBERTEーー君に
「いや、そういう所。肝が座っているなと思って。やっぱり街頭演奏の賜物なのかなと」

「音楽の都と呼ばれる地に居て街頭演奏しないのは、もったいない。いきなり演奏を始めても、振り返って聴いてもらえることが、どれほどスゴいことか」

「いや、上手い演奏には自然と集まるだろ」

「そうでもないかな。ケルントナー通りで、デュオで弾いた時、感じなかったか? 序盤は興味本位、中盤までは冷めていた。後半に入ってやっとまともに聴いていた」

「へぇ~よく観ているんだな」

「聴き手は正直だ。容赦ない。興味をもってくれれば上々。先ず、素通り。足を止めても気に入らなければ去る。或いは野次、最後まで聴いてくれれば御の字」

「なんか、スゲーェ孤独」

「でも、弾き甲斐はあるーーーちゃんと演奏を聴けと、必ず振り向いて最後まで聴かせてやると」

詩月の顔は呆れるくらい晴れやかだった。
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