LIBERTEーー君に
10章 伴奏者
7月上旬、詩月の下宿先ーーユリウス宅。

早朝、詩月のスマホに電話がかかってきた。

「安坂さん? お久しぶりです」

ーー周桜、元気か?

「ええ、特に変わりないです。何か困ったことでも?」

ーー実はコンクールの伴奏者のことで訊ねたいことがあるんだが

「ブラームスコンクールに出場されるんですよね。伴奏者申請すれば、現地でコンクール主催側に伴奏者を指定してもらえるのでは」

ーー察しがいいな。実はそれなんだが、どうも信用できなくてな。初対面の人間とはちょっと演奏しづらいし、ドイツ語も何とか話せる程度で、堪能ではないし。師事している教授から紹介された伴奏者とは合わなくて

「そうですか。弱りましたね。実は大学の先輩の伴奏をするんです」

ーーミヒャエルか?

「ええ」

ーーおおよそ予想はしていたよ

「当てがないと言うことですよね……1日、貰えますか。こちらから、連絡します」
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