(仮)愛する者
声は公園の隅、休憩スペースから聞こえた。
木の影からそっと覗いてみる。
予想通り、少女がいた。
しかし、そこには現実感のない光景が広がっていた。
「・・・綺麗だ」
思わず呟いていた。
ここからはベンチに座った後ろ姿しか見えない。
肩甲骨までの絹糸のような金色の髪。
薄いピンクのドレスは、袖が白いシフォン生地でふんわり膨らんでいて、背中に虹色の蝶のような羽がついている。
風が吹くたびに周りの桜の木から花びらが舞い降りてくる。
それだけでも十分幻想的なのに、なぜか少女の周りは淡く光っている。
ふと、少女が立ち上がり、数歩前に歩く。
(帰るのかな?)
思った瞬間、、、
ふわり、と舞い上がった。
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