あの花が咲く頃、君に会いにいく。
「…あの、凛…。さっきはごめん。思いっきり叩いて…」


「…本当だよ。あの化け物に首絞められたのよりも、あんたに頬引っ叩かれて髪の毛引っ張られた時の方が痛かった」



茅乃がいつものように俯きながら、ごめんともう一度謝った。



「…今のあんたは、昔の私にそっくり。だからこんなにもムカつくんだろうね」


「…え?」


「私ね、中学の頃いじめられてたの。一年から三年まで、ずーっと」



そんなこと、私も茅乃も初めて聞いた。いつもあんな強気な凛が、いじめられていた?



「ずっと苦しかったけど、お母さん達に心配かけたくなくて一日も休んだことない。すごいでしょ?上履き隠されたり、教科書も机もなくなってたり、そんなことしょっちゅうだった。給食に虫入れられたり、トイレに行ったら上から水かけられる。そんなベタないじめを毎日毎日飽きることなくされて、担任もクラスメイトも見て見ぬふり。それどころか私なんて最初からいないように扱う。助けを求めても、誰も助けてくれなかった。早く卒業したかった。みんな大嫌いだった。…だけど、そんなクズ達よりも私は私が一番大嫌いだった。いっつもビクビク怯えることしかできなくて、助けてってお母さん達にも言えない。そんな弱い自分が一番大嫌いだった」



静かな靴箱に、凛の涙ぐんだ声だけが聞こえる。


きっとこの会話を、玲と七海も聞いているだろう。



「高校に入って、昔の私みたいなあんた、茅乃に、段々イラつくようになった。昔の自分が大嫌いだったから。茅乃と昔の自分を重ねて、昔の私を消したくて、気づいたらもう引き返せないとこまで来てた。思ってもない悪口をわざと言ったり、周りにはわからない程度の嫌がらせをして、茅乃をいっぱい傷つけた。…だけど、茅乃にはいつも紫音がいた。どんなに嫌がらせをしても茅乃には紫音がずっといた。…私にもそんな誰かがいたら、どんなに救われてたんだろう…。私だって一人でいいからそんな友達が欲しかった。茅乃と紫音が羨ましかった…」



凛の告白をみんなが静かに聞いている時だった。



–––ペタッ。ペタッ。ペタッ。
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