オタクな俺とリアルな彼女。
「ここでは何故か私の名前があちこちで知れている。よって,配信の事を安易に話されては都合が悪い。落ち着いて呑めなくなるからだ」

「おっ……勝手に喋ったりなんか…!」



名前が知れているのも仕方ない。

美人で,賢くて,格好いいからに決まってる。

両性からモテたって何も不思議なことはない。



「ああそうだとも。1つ,確認をしておきたかっただけだ。もし私の意に沿わないことが君によって起こるのてあれば,その時は……それ相応の報復を覚悟しろとな」



全然信用してくれない…

半目になるも,それもそうかで簡単に済まされた。

俺が苦笑すると,先輩はまた怪訝そうにする。



「ふむ。水無月薫,君はやはり少し変わっている。私は普段より更に冷たく接している筈なのに,何がそんなに面白い? ずっと似たような笑みを浮かべているな」



どきりと,冷や汗が頬を伝った。

そりゃそうだよ。

恥ずべき事でも何でもないのに,先輩のオタクだなんて知られたくない。



「私の容姿が,君にとって好ましいのは先程理解した。けれど君が今まで見ていたのは画面越しの私でしかない。一方的な要求をする私に,少しは幻滅とやらをするべきでは無いのか?」

「いえ,全く変わりません」



さらっと真顔で言ってしまった。

俺は特に理不尽な事を言われたわけではないし,喋っていても何の違いも感じない。

けれど先輩にとっては違うみたいで,心外だと言外にまた眉をひそめられる。
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