あの日の誓い
***
津久野さんのことをしっかり調べあげる期間を、一ヶ月に設定した。
職場の部下に手を出して、平然と不倫する相手だからこそ、一週間やそこらで悪事を暴ける気がしないと私が言ったら、山下さんと田所さんも同意見で、とりあえず一ヶ月を目処に調査することになった。
調査を開始したあとは、その日にあった調査のレポートを、LINEで知らせてくれることが、私としてはめちゃくちゃありがたかった。
そこまで詳細なものではなかったものの、清廉潔白な津久野さんの行動を確認し、悲しむことがないハナの一日を可視化して見ることができて、毎日安堵する日々が続いていたのだけれど。
『明日彼が出張で不在! とっても寂しいから、いつものとこで絵里と飲みたいな♡』
なんていうハナからのLINEを唐突にもらい、山下さんたちに津久野さんが明日出張だと連絡し、一応遠出に備えてもらった。
本当は私が津久野さんの出張先を聞ければいいのだけれど、ただの親友の私がそれをして、ハナに不審に思われても困るので、なんとか我慢した。
そしてハナに逢う当日。平静を装いながら『ムーンナイト』に赴き、私たちの指定席になってるカウンター席に腰かけた。ハナはまだ来ていない。
「いらっしゃいませ、絵里さん。お仕事でお疲れなんですか? なんだか顔色が、どこかすぐれないようにお見受けしますが」
マスターがおしぼりを出しながら、私を気遣うように話しかけてくれた。
「仕事じゃなく、プライベートでちょっとね……。いつもと同じくハナと待ち合わせしてるから、彼女が来てからオーダーしてもいい?」
「かしこまりました」
丁寧に頭を下げたマスターがお冷をカウンターに置いて、洗い物をはじめる。店内にはほかにお客さんがボックス席に二名いるだけで、そこはかとなく閑散としているものの、寂しさを感じさせないように、聖哉くんの弾くピアノが優しく流れた。
それが否応なしに、今の私の心に染み入る。
小さなため息をつきながら、さっき山下さんから送られてきたばかりの、写真が添付されているLINEを読み直した。
『対象は今日1日、この女性と一緒にいらっしゃいました。もちろん奥様ではありません。こちらの女性について、調査するかどうかご検討ください』
(いったいどういうこと? 津久野さんはハナのほかにも、付き合ってる女性がいるってことなのかな……)
添付された写真には、スーツ姿の津久野さんの片腕に絡む、ハナよりも若い女性の姿が写っていた。親しげなその様子は、兄妹という感じじゃないのは見てとれる。
調査対象がひとり増えるだけで、プラス10万円ほど上乗せされるけど、そんなことに頭を悩ませる私じゃなかった。
『山下さん、お手数をおかけしますが、その女性も調査してください。よろしくお願いいたします』
スマホにテキパキ打ち込み、送信ボタンを押す。津久野さんの裏の顔を暴くためには、写真に写ってる若い女性の情報が不可欠だった。
津久野さんのことをしっかり調べあげる期間を、一ヶ月に設定した。
職場の部下に手を出して、平然と不倫する相手だからこそ、一週間やそこらで悪事を暴ける気がしないと私が言ったら、山下さんと田所さんも同意見で、とりあえず一ヶ月を目処に調査することになった。
調査を開始したあとは、その日にあった調査のレポートを、LINEで知らせてくれることが、私としてはめちゃくちゃありがたかった。
そこまで詳細なものではなかったものの、清廉潔白な津久野さんの行動を確認し、悲しむことがないハナの一日を可視化して見ることができて、毎日安堵する日々が続いていたのだけれど。
『明日彼が出張で不在! とっても寂しいから、いつものとこで絵里と飲みたいな♡』
なんていうハナからのLINEを唐突にもらい、山下さんたちに津久野さんが明日出張だと連絡し、一応遠出に備えてもらった。
本当は私が津久野さんの出張先を聞ければいいのだけれど、ただの親友の私がそれをして、ハナに不審に思われても困るので、なんとか我慢した。
そしてハナに逢う当日。平静を装いながら『ムーンナイト』に赴き、私たちの指定席になってるカウンター席に腰かけた。ハナはまだ来ていない。
「いらっしゃいませ、絵里さん。お仕事でお疲れなんですか? なんだか顔色が、どこかすぐれないようにお見受けしますが」
マスターがおしぼりを出しながら、私を気遣うように話しかけてくれた。
「仕事じゃなく、プライベートでちょっとね……。いつもと同じくハナと待ち合わせしてるから、彼女が来てからオーダーしてもいい?」
「かしこまりました」
丁寧に頭を下げたマスターがお冷をカウンターに置いて、洗い物をはじめる。店内にはほかにお客さんがボックス席に二名いるだけで、そこはかとなく閑散としているものの、寂しさを感じさせないように、聖哉くんの弾くピアノが優しく流れた。
それが否応なしに、今の私の心に染み入る。
小さなため息をつきながら、さっき山下さんから送られてきたばかりの、写真が添付されているLINEを読み直した。
『対象は今日1日、この女性と一緒にいらっしゃいました。もちろん奥様ではありません。こちらの女性について、調査するかどうかご検討ください』
(いったいどういうこと? 津久野さんはハナのほかにも、付き合ってる女性がいるってことなのかな……)
添付された写真には、スーツ姿の津久野さんの片腕に絡む、ハナよりも若い女性の姿が写っていた。親しげなその様子は、兄妹という感じじゃないのは見てとれる。
調査対象がひとり増えるだけで、プラス10万円ほど上乗せされるけど、そんなことに頭を悩ませる私じゃなかった。
『山下さん、お手数をおかけしますが、その女性も調査してください。よろしくお願いいたします』
スマホにテキパキ打ち込み、送信ボタンを押す。津久野さんの裏の顔を暴くためには、写真に写ってる若い女性の情報が不可欠だった。