あの日の誓い
***

 調査期間の満了日にアポを取り、私はふたたび探偵事務所を訪れた。神妙な面持ちの所長さんに促されて中に入る。応接セットのソファに腰かけ、ローテーブルに置かれた、詳細な調査書類に目を通した。

「岡本さん、ご質問があれば、遠慮なく仰ってください」

「ありがとうございます。とりあえず、最後まで目を通してからにします」

 所長さんの顔を見ずに、書類をガン見したまま答える。一字一句見落としがないように、ラブレターを読む気持ちで、プリントされた文字を丁寧に追っていった。

「は~っ……」

 そして数分後すべてを確認し、一旦書類を裏返しにしてから、両手で頭を抱える。私の予想を超えた津久野さんの行動を、これからハナに報告しなきゃいけないと思っただけで、気が滅入りそうだった。

「大丈夫ですか?」

「なんか想像以上だったので、いろいろショックが大きくて……」

 私自身が、これだけ大きなショックを受けたのである。恋人のハナが真実を知ったときの衝撃は、その倍になるだろう。

「ウチに依頼したお客様が調査結果を目にしたときは、ショックを受けられる方がほとんどです。号泣してしまい、話し合いにならない方もいらっしゃるくらいに」

「そうですか。だけど調査期間を長めに設定しなきゃわからない事実があったので、今回は成功でしたね」

 事細かに調べてくれたことを褒めなければと、なんとか自身の気を取り直す。所長さんと話し合いをするうえで、冷静な判断をしなければならない場面があるかもしれないと考え、呼吸を整えつつ、なんとかメンタルをフラットにする努力を心がけた。

「そうですね。ターゲットの出張が不定期という話でしたので、ご友人以外の女性の存在を知ることができましたし、調査期間中にいろいろ調べることができました」

「彼女は津久野さんが支店で働いていたときの、不倫相手なんですね。まだ付き合っているのでしょうか?」

 裏返していた書類をもとに戻し、写真付きの報告書を見ながら訊ねてみる。

「ええ。調べてみたところ彼女自身も、ターゲット以外に付き合ってる男性がいるようで、えっと……。まだ確定じゃなかったので、書類には記載しなかったんですが、どうやらターゲットが本店に異動してからできた彼氏のようです」

「ふたりして有給とって影で逢ってるなんて、未練ありまくりじゃない!」

 思わず、ローテーブルを殴ってしまった。自分の奥さんだけじゃなくハナも裏切り、めでたく三股をこなしているなんて、本当に信じられない。
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