あの日の誓い
「ハナ、奥さんに本当のことを言ったとしても、ハナと同じように傷つくんだよ。愛人であるハナがそれをしたら、今以上に深い傷になるのは目に見えるって」

 持っていたハンカチを取り出し、ハナの涙を拭いながら告げた。

「部長に奥さんがいることを知りながら平然と付き合って、結婚式場まで見に行った私は、誰がどう見ても悪い女でしょ。悪いことをしたのなら、きちんと謝らなきゃ」

 昔から言い出したらきかないハナの性格をよく知ってる私としては、どうにもならないことがわかってた。

 だからといって、このまま親友が傷ついていくのを、黙って見過ごすわけにはいかない。

「だったら私も、それに同伴する!」

「絵里?」

「親友が間違った道に行きそうになったら、傍にいる私が正してあげないと。あとこうして涙を拭ったりね」

 私のセリフを聞いたハナの目尻に、どんどん涙が溜まっていく。とめどなく溢れるそれを、わたわたしながらハンカチで拭った。

「絵里、ごめんね。私……」

「わかってると思うけど、私だって聖人君子じゃない。間違えることがある。それを正すのは、ハナの役目なんだよ。やることがあるんだから、そのことを肝に銘じて!」

 失った恋心を埋めるには友情という思いは、圧倒的に足りないかもしれない。その足りないところを、なにで補ったらいいのか。

 私はハナの細い体を抱きしめながら、頭の隅で必至に考える。

 愛する人に裏切られた苦痛を忘れるような、夢中になれるなにかがあればいいのにと――。
< 22 / 66 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop