あの日の誓い
 影ながら榊原さんに支えてもらっていたことを、脳裏で思い出していると。

「絵里、お願いだから私の事情を優先しないで、その彼を絶対にゲットしなさいよ」

 私が驚くようなことを、ハナが突然言い出した。

「なに言ってるの。榊原さんとは、そういうのじゃないってば」

「ああ、もう! 本当に、いつも鈍いんだから! 絵里に惹かれるものがあったから、彼が話しかけてくれたんだと思うよ」

「そんなこと――」

 立ち止まって言い淀む私に、ハナは白い目で突き刺すように見ながら、言の葉を告げる。

「あるに決まってる。探偵する側が依頼者に興味を示すなんて、余程のことがない限り、ありえないって。普段から不倫とか、そういうのを扱っている人だからなおのこと!」

 説得力を増すためなのか、右手人差し指をたてて、くどくど物申すハナに、ちょっぴりウンザリした。

「トラぶりたくないから、恋愛する気にはなれないんだけど」

 ハナを含めて、恋愛に苦労してる姿を垣間見ているせいで、まったく恋愛する気になれなかった。

「そのトラブルを乗り越えて、お互い心を通わせることによって、愛を育んでいくんだって。わかってないなー!」

「不倫してたハナに言われてもなぁ……」

「言ってくれたね。絵里の目の前で、ちゃんと謝るところ見せつけてやるんだから! ほら早く案内してよ」

 私の左腕を引っ張り、歩くように促したハナはとても元気で、これから不倫の清算をしようとしてるように見えない。入院するくらいに体とメンタルが落ち込んでいた親友が、無理してはしゃいでいるのは、すぐにわかったものの。

(強がりのハナらしいといえばそうなんだけど、このあとひとりにしないで、私の家でヤケ酒でもあおらせて、元気づけてあげようっと)

 そんなことをこっそり計画しながら、津久野さんの家を目指したのだった。
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