あの日の誓い
てっきり自分の親父からツッコミが入るとか、義父から質問されるかも。なんてことを予測していただけに、顔をあげた向こう側の面々の心情がまったくわからなくて、めちゃくちゃ不安に駆られた。
(怖気づいてる場合じゃない。コイツらの口撃から、なんとしてでも逃れなきゃならない!)
「俺が拒否れば拒否るだけ、相手がムキになって迫ってきて、結果襲われたみたいな形から脅されて、仕方なく付き合うことになってしまったんです」
流れるようにいいわけを告げて顔をあげると、両家そろってにこやかな笑みを浮かべていた。妻の明美も満面の笑みで、俺を見下ろす。
「輝明さん、言いたいことはそれだけかしら?」
「えっ?」
俺が口ごもると明美はスマホを弄り、「これだったかしら」なんて楽しげに言って、画面をタップした。
『確かに部長とそういう関係になっちゃったのは、いけないことだし悪いと思ってる。だけどね、いきなり私を襲って、そういう関係に無理やりもちこんだ部長のほうが、もっと悪いんだから』
「ちょっと待ってくれ。これは遠藤という、支店にいる女子社員の嘘なんだ、信じてくれ! 俺は襲ってなんていない。俺はこの女に脅されていたんだ!」
「だったらアナタ、脅されたという証拠を見せて」
明美は言いながら数枚の写真を、俺の顔面に投げつけた。地面に落ちたそれに視線を注いで、声をあげそうになる。レストラン前にいる俺と支店の女子社員は、見るからに仲睦まじく腕を組み、中に入ろうとしていた写真と、女子社員の腰に腕を回してホテルから出てきた写真だった。
「な、んでこんな、ものが……」
脅されて付き合っているのは事実なれど、こんなふうに一場面だけ切り取られたりしたら、弁解するのに時間がかかるのは明らかだった。
『華代、俺が悪かった! 妻と離婚して絶対に結婚するから、見捨てないでくれ! お願いだ‼』
ショックで固まる俺に、明美はふたたび音声を流した。
「これも違うんだ。俺は命の危機に陥っていて、それを回避するために嘘を」
「平気で噓をつく人の話を信じろっていうほうが、無理な話じゃないのかしら?」
「本当に俺は危なかったんだって。以前蜂に刺された話を部下にしていたのを使われて、スズメバチを使って脅されたんだ。アナフィラキシーショックなんて出たら、それこそいつ死んでもおかしくないだろ」
「その部下とアナタは、不倫していたのでしょう? しかも結婚を前提のお付き合い。わざわざ式場まで、足を運んでいたみたいじゃない」
「それはアイツに強請られて、仕方なく行っただけ……」
告げる言葉に次第に力がなくなり、声が小さくなっていく。複雑な感情が胸の中を渦巻き、唇を震わせる俺に、明美がまた音声を聞かせた。
『ああ、本当さ。妻とは別れて、華代と結婚しようと考えてる。だからこの間一緒に、式場巡りをしたじゃないか』
「輝明さん、この発言はみずから式場に行ったように聞こえるけど、訂正する気持ちはある?」
まるで事前に用意していたかのようなそれに、疑問がふつふつと沸き上がった。
(怖気づいてる場合じゃない。コイツらの口撃から、なんとしてでも逃れなきゃならない!)
「俺が拒否れば拒否るだけ、相手がムキになって迫ってきて、結果襲われたみたいな形から脅されて、仕方なく付き合うことになってしまったんです」
流れるようにいいわけを告げて顔をあげると、両家そろってにこやかな笑みを浮かべていた。妻の明美も満面の笑みで、俺を見下ろす。
「輝明さん、言いたいことはそれだけかしら?」
「えっ?」
俺が口ごもると明美はスマホを弄り、「これだったかしら」なんて楽しげに言って、画面をタップした。
『確かに部長とそういう関係になっちゃったのは、いけないことだし悪いと思ってる。だけどね、いきなり私を襲って、そういう関係に無理やりもちこんだ部長のほうが、もっと悪いんだから』
「ちょっと待ってくれ。これは遠藤という、支店にいる女子社員の嘘なんだ、信じてくれ! 俺は襲ってなんていない。俺はこの女に脅されていたんだ!」
「だったらアナタ、脅されたという証拠を見せて」
明美は言いながら数枚の写真を、俺の顔面に投げつけた。地面に落ちたそれに視線を注いで、声をあげそうになる。レストラン前にいる俺と支店の女子社員は、見るからに仲睦まじく腕を組み、中に入ろうとしていた写真と、女子社員の腰に腕を回してホテルから出てきた写真だった。
「な、んでこんな、ものが……」
脅されて付き合っているのは事実なれど、こんなふうに一場面だけ切り取られたりしたら、弁解するのに時間がかかるのは明らかだった。
『華代、俺が悪かった! 妻と離婚して絶対に結婚するから、見捨てないでくれ! お願いだ‼』
ショックで固まる俺に、明美はふたたび音声を流した。
「これも違うんだ。俺は命の危機に陥っていて、それを回避するために嘘を」
「平気で噓をつく人の話を信じろっていうほうが、無理な話じゃないのかしら?」
「本当に俺は危なかったんだって。以前蜂に刺された話を部下にしていたのを使われて、スズメバチを使って脅されたんだ。アナフィラキシーショックなんて出たら、それこそいつ死んでもおかしくないだろ」
「その部下とアナタは、不倫していたのでしょう? しかも結婚を前提のお付き合い。わざわざ式場まで、足を運んでいたみたいじゃない」
「それはアイツに強請られて、仕方なく行っただけ……」
告げる言葉に次第に力がなくなり、声が小さくなっていく。複雑な感情が胸の中を渦巻き、唇を震わせる俺に、明美がまた音声を聞かせた。
『ああ、本当さ。妻とは別れて、華代と結婚しようと考えてる。だからこの間一緒に、式場巡りをしたじゃないか』
「輝明さん、この発言はみずから式場に行ったように聞こえるけど、訂正する気持ちはある?」
まるで事前に用意していたかのようなそれに、疑問がふつふつと沸き上がった。