あの日の誓い
 圧迫面接とも思える雰囲気が室内に漂い、なんとも言えない緊張感で、心臓が痛いくらいにバクバク鼓動する。

「俺、人事部でこの仕事をして、いろいろ見てきたけど、それなりの役職に就いてるイケてない職員が、不特定多数を相手に不倫してるのは、今回がはじめてだよ。残念な限りだね」

 机で叩いて乱れた書類を揃え直し、颯爽と椅子から立ち上がった人事の責任者は、上司と俺を交互に眺めた。

「赤坂さんは厳重注意を含めて、ボーナスのカットや給料減給を覚悟していてね」

「承知致しました」

 慌てて椅子から腰をあげ、人事の責任者に深々と頭を下げた上司を見てるのに、俺は同じことをする気になれなかった。

「津久野部長」

「はい……」

「赤坂さんの処分を考えたら、ご自分がどうすればいいのか。言わなくてもわかるでしょう?」

 さりげなく自己都合退職を促し、自身の仕事を減らそうとしていることに、心底辟易する。いっそのこと、懲戒解雇してくれたほうが清々するのに。

 人事の責任者から解放されたあと、上司と一緒に職場に戻り、部下に仕事の引継ぎを適当にしてから、自分の荷物を段ボールに詰め込んだ。

 昼食の時報の前に会社を出て役場に向かい、離婚届を無事に提出し、そのまま自宅に戻ろうとした俺の前に、意外な人物が現れ、驚きを隠せない。なぜこのタイミングで現れたのかと、妙に勘ぐってしまった。

「私、全部見ちゃったんだぁ。部長が名もない森で木に縛りつけられて、四つ足歩行した男の人に怯えてるのを見て、お腹を抱えて笑っちゃった!」
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