あの日の誓い
繋いでいる手を握りしめ、意を決して言の葉を告げる。
「じゃあ航希くんに甘えて、マッサージ頼んじゃおうかなぁ」
「ま、マジで?」
「マジだよ」
「よっしゃー!」
上目遣いで照れながら告げた途端に、航希くんは私の手を繋いだまましゃがみ込み、喜びを示すように反対の手でガッツポーズを作る。
「あはは、待たせちゃったもんね」
「い、いやいや。楽しみはとっておきたい、みたいな」
今度は航希くんが照れる番。ガッツポーズを作った手で後頭部を搔いて、顔を赤らめさせる。
「ごめんね、もったいぶって」
「ヤりたいだけじゃなくて、あの……大好きな絵里さんに、直接触れたいだけなんです。この世で一番近い存在になりたくて」
「そういうこと、ぽんぽん言われると対処に困る」
これまでのことを含めて思い切って言ってみると、航希くんはしゃがんでいた姿勢から勢いよく立ち上がり、熱を込めた視線を私に注ぐ。
「俺は正直な気持ちを言ってるだけです。絵里さんに俺のことを知ってほしいから」
「そうやって、何度も直球を投げられる、私の身にもなってほしい」
まじまじと見つめられる視線にどうにも照れてしまい、俯いてしまった。
「絵里さんは直球、投げてくれないんですか?」
「直球なんて、なにを言えばいいのやら……」
困ってる私の体を、逞しい二の腕がぎゅっと抱きしめた。
「さっきみたいに、俺にしてほしいことを言えばいいだけですよ」
「マッサージしてほしい、みたいに?」
ちなみに現在いるところは、ときどき人が行き交う歩道のど真ん中である。バカップルがこんなところでなにをやってるんだろうかと、白い目で見ていた側だった、ちょっと前の私。
人の目につくところで恥ずかしいって思う一方で、航希くんが私を想ってくれる気持ちが伝わるおかげで、ふたりだけの世界を堪能できた。航希くんから伝わってくる心音の速さを聞くだけで、嬉しくて笑みが浮かんでしまう。
「絵里さんが思ってることを、口に出してみてほしいです。俺はどんな小さなことでも知りたい。アナタのことが大好きだから」
耳元で甘やかに囁かれたセリフに導かれるように私は頭をあげ、カッコイイ航希くんの顔を見つめる。
「自分が食べ頃なのかわからないんだけど、試しに味見してみる?」
「しますします! 味見なんて言わずに、絵里さんのすべてを完食させてください、俺の家で!!」
頬を上気させた航希くんが力任せに私を横抱きにして、いきなり駆けだした。あまりの素早さに私は慌てて航希くんの首元に両腕を巻きつけ、自身の安全を確保。彼を落ち着かせるべく、声をかける。
「航希くん、私は逃げたりしないから安心して」
(なんだか、頭からバリバリ食べられちゃいそうだな――)
「1分1秒すら惜しいんです。だってふたりきりでいられる時間は、限られているんですよ」
なんて言われちゃったら、それ以上の苦情が言えない。だって私も、航希くんと過ごせる時間が惜しいと思った。
こうして無事に、初心なカップルから脱却することができたのだけれど、私を完落ちさせるべく、ハナが事務所にて航希くんにあれこれ指南していたことが後日発覚した。
『絵里には結婚資金で貯めていた大金を使わせて、私をまっとうな道に戻してもらったお礼をしなきゃいけなかったからね。これくらいは、当然のことでしょ』
親友のしあわせを導くためのハナのミッションに、私は深く感謝したのだった。
おしまい
閲覧とコメントなどのリアクション、ありがとうございました。
おかげさまで最後まで書ききることができました。
お礼にちょっとした番外編をこのあと連載しますので、お楽しみくださいませ。
「じゃあ航希くんに甘えて、マッサージ頼んじゃおうかなぁ」
「ま、マジで?」
「マジだよ」
「よっしゃー!」
上目遣いで照れながら告げた途端に、航希くんは私の手を繋いだまましゃがみ込み、喜びを示すように反対の手でガッツポーズを作る。
「あはは、待たせちゃったもんね」
「い、いやいや。楽しみはとっておきたい、みたいな」
今度は航希くんが照れる番。ガッツポーズを作った手で後頭部を搔いて、顔を赤らめさせる。
「ごめんね、もったいぶって」
「ヤりたいだけじゃなくて、あの……大好きな絵里さんに、直接触れたいだけなんです。この世で一番近い存在になりたくて」
「そういうこと、ぽんぽん言われると対処に困る」
これまでのことを含めて思い切って言ってみると、航希くんはしゃがんでいた姿勢から勢いよく立ち上がり、熱を込めた視線を私に注ぐ。
「俺は正直な気持ちを言ってるだけです。絵里さんに俺のことを知ってほしいから」
「そうやって、何度も直球を投げられる、私の身にもなってほしい」
まじまじと見つめられる視線にどうにも照れてしまい、俯いてしまった。
「絵里さんは直球、投げてくれないんですか?」
「直球なんて、なにを言えばいいのやら……」
困ってる私の体を、逞しい二の腕がぎゅっと抱きしめた。
「さっきみたいに、俺にしてほしいことを言えばいいだけですよ」
「マッサージしてほしい、みたいに?」
ちなみに現在いるところは、ときどき人が行き交う歩道のど真ん中である。バカップルがこんなところでなにをやってるんだろうかと、白い目で見ていた側だった、ちょっと前の私。
人の目につくところで恥ずかしいって思う一方で、航希くんが私を想ってくれる気持ちが伝わるおかげで、ふたりだけの世界を堪能できた。航希くんから伝わってくる心音の速さを聞くだけで、嬉しくて笑みが浮かんでしまう。
「絵里さんが思ってることを、口に出してみてほしいです。俺はどんな小さなことでも知りたい。アナタのことが大好きだから」
耳元で甘やかに囁かれたセリフに導かれるように私は頭をあげ、カッコイイ航希くんの顔を見つめる。
「自分が食べ頃なのかわからないんだけど、試しに味見してみる?」
「しますします! 味見なんて言わずに、絵里さんのすべてを完食させてください、俺の家で!!」
頬を上気させた航希くんが力任せに私を横抱きにして、いきなり駆けだした。あまりの素早さに私は慌てて航希くんの首元に両腕を巻きつけ、自身の安全を確保。彼を落ち着かせるべく、声をかける。
「航希くん、私は逃げたりしないから安心して」
(なんだか、頭からバリバリ食べられちゃいそうだな――)
「1分1秒すら惜しいんです。だってふたりきりでいられる時間は、限られているんですよ」
なんて言われちゃったら、それ以上の苦情が言えない。だって私も、航希くんと過ごせる時間が惜しいと思った。
こうして無事に、初心なカップルから脱却することができたのだけれど、私を完落ちさせるべく、ハナが事務所にて航希くんにあれこれ指南していたことが後日発覚した。
『絵里には結婚資金で貯めていた大金を使わせて、私をまっとうな道に戻してもらったお礼をしなきゃいけなかったからね。これくらいは、当然のことでしょ』
親友のしあわせを導くためのハナのミッションに、私は深く感謝したのだった。
おしまい
閲覧とコメントなどのリアクション、ありがとうございました。
おかげさまで最後まで書ききることができました。
お礼にちょっとした番外編をこのあと連載しますので、お楽しみくださいませ。