あの日の誓い
***

「昨日はすみませんでした。急なお願いで、有給休暇をいただいてしまって」

 山下探偵事務所に顔を出した榊原は、所長のデスクに赴き、頭を深く下げながら告げる。

 表向きは依頼人と食事したことになっているが、実際は復讐する場所の下見をするために、軽い遠出をすることにしたので、急きょ休むことになった。

「いいんだって、そんなの。岡本さんがお礼にって誘ってくれたんだろ?」

「はい。一緒に食事に行きました」

「食事か、いいねぇ。それで距離は縮まったのか?」

「所長、榊原くんのプライベートを根掘り葉掘り聞いて、あからさまに探りを入れない!」

 副所長の田所が、目を吊り上げて注意した。

「いいじゃないか、ちょっとくらい。ねぇ?」

「あはは、距離は縮まりましたよ。お互い名前で呼び合えるくらいに」

「マジか。田所ちゃん、榊原くんが岡本さんに捕られちゃうよ」

 榊原がぎょっとすることを告げたせいで、妙な雰囲気が事務所に流れた。

「確かに職場では榊原くんは相棒ですけど、事務所から一歩出たら、ただの知人という関係は崩れません。年齢差を考えてください」

「所長そうですよ。田所さんがかわいそうです」

 ふたりそろって、所長に非難するセリフを吐き捨てた。

「え~っ、年の差を超えた愛が成立するか、俺としては見たかったのになぁ」

「俺は所長と副所長が、仲良くしてるのを見たいですけどね」

 ニヤついたまなざしを榊原が田所に向けた途端に、田所の眉間のシワが深まる。

「ちょっと榊原くん、なに言ってんのよ。この人の仕事のフォローだけで手一杯なのに、プライベートでもやれっていうの?」

「田所ちゃんがかわいそうだろ、ホントそういうところ、空気読めてないよね」

(一番空気が読めていないのは、所長ですよ)

 なぁんてことを、榊原は顔に出さないように気をつけつつ、明後日も諸事情で休むことを告げ、デスクから離れた。

 復讐に加担したことに後悔はなかったものの、自身の恋愛事情がこのあとどうなるか。進展させるために、自分のできることを榊原は考えたのだった。
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