あの日の誓い
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 ミッション実行前夜、絵里は落ち着かない気持ちを抱えたまま、ベッドで横になりながらスマホでネットサーフィンをしていた。

 眺めていた画面が突如変わり、着信を知らせる。相手の名前が目に飛び込んできたせいで、すぐにタップし、画面に話しかけつつ起き上がった。

「航希くん、どうしたの? なにか問題発生?」

 開口一番に訊ねると、画面の向こう側から落ち着いた声が聞こえる。

「問題は発生していないんですけど、気づいたことがあって電話しちゃいました」

「気づいたこと?」

「斎藤さん、慣れないことをこれからしようとしてるから、肩にいらない力が入ると思うんです」

「うんうん、それで?」

「そういうプレッシャーみたいなのを、山に向かう道すがら、車の中で解せたらいいなと思いまして。俺ひとりじゃ荷が重いので、絵里さんにも手伝ってほしいなって」

「航希くんすごいね。私全然気にしてなかった」

「あ、ほら、俺、普段からいろいろやってる関係で、気づいたというか」

「ありがとね。私も手伝うよ」

「助かります。それと、ですね……」

「なに?」

「さっきまで四足歩行の練習、してたんですけど――」

「野犬になりきるヤツね。本物がいたらよかったのに」

「訓練された犬じゃないと無理ですよ。本番一発勝負なんですし」

「航希くん練習してくれたんだ、偉いね」

「失敗は許されないですし、完璧にこなそうと思って、撮影しながらやってみたんですけど、絵里さんドン引きしないでください」

「そんなのしないよ、安心して」

「でもすごく醜いというか、変というか」

「絶対笑ったりしないし、大丈夫!」

「……嫌いにならないで、ほしいデス」

「嫌いにならないよ」

「ホントに?」

「本当だよ」

「じゃあ、好きになってくれませんか?」

「!!」

「俺を好きになってほしい、デス。イッチャッタ……」

「航希くん――」

「今言わなきゃ、明日は全員集合で言う機会ないし、それに野犬の真似をして嫌われたくなかったから、念押ししようと思ったのは確かで」

「うん」

「絵里さんの好みって、どんなヤツなんですか?」

「わっ、私の好み!?」

「好きな人の好みに、少しでも近づきたいなと思いまして」

「そんなのいないよ。なんかほら私の周りって、ハナを含めて、恋愛に苦労してる人ばっかりで、そんなの見てたら、恋愛する気力がなくてね」

「今まで誰かに告られたこと、ないんですか?」

「え、あ……その、あるよ」

「やっぱり。それって、いつのことですか?」

「10日くらい前……」

「それって、つい最近のことじゃないですかっ! 相手は誰なんですか? どんなヤツ? カッコイイ感じ? もしかしてお医者さんですか?」

「航希くん落ち着いて。確かに職場の人だけど、そういう対象に見えないコだったの」

「その言い方、お相手は年下なんですね?」

「うん。私が教育係で、面倒を見てたコ」

「絵里さんすっごく優しいし、面倒みもいいから、きっとその彼に好かれたんですね。もう付き合ってるんですか?」
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