あの日の誓い
「付き合ってないよ。なんか職場で、そういうのできないんだよね。周りが付き合ってることに気づいて、ひやかしてるのを見たりしてるし。それに彼は弟みたいな感じで、恋愛対象にならなかったんだ」

「俺は絵里さんから見て、恋愛対象になりますか?」

「あ……」

「絵里さんの職場に勤めてないから、冷やかさされることないですよ」

「航希くんって、見た目以上に押しが強いんだね。ビックリしちゃった」

「それは! だってせっかくこうして出逢えたんですから、逃したくない人だと思っているんですけど。年下の俺じゃあ頼りなくて、絵里さんの恋人にはなれませんか?」

「ちょっと待って。航希くんと逢って、まだ日が浅いでしょ。お互い全然知らないところがありすぎて、わからないのもある」

「それって、俺にもチャンスがあるってことですか?」

「チャンスというか、友達からはじめて航希くんのことをちゃんと見て、判断したいなと思ってる」

「……」

「航希くん?」

「すっ、すみません。チャンスがあると思ったら、なんかすげぇ嬉しくて、無言でガッツポーズ決めちゃってました」

「ふふっ、航希くんが喜んでるところ、想像できちゃうな」

「俺ってば単純な男だから、絵里さん操作しやすいと思いますよ」

「航希くん、アピールしすぎ」

「うざかったら言ってください。一歩だけ遠慮するんで」

「一歩だけ?」

「絵里さんの視界に絶対入っていたいから、それ以上は退かないです」

「ぶっ!」

「当日使うスズメバチの音源、いいのが見つかったので、ラインで3つほどあとから送りますね。使えそうなものを斎藤さんと決めてください」

「あ、ありがとね。助かる……」

「ほかになにか、俺にできることはないですか?」

「今のところは大丈夫。航希くんも犬の練習ほどほどにしなきゃ、当日疲れて、くたびれちゃうかもしれないよ」

「わかりました、もう寝ます。おやすみなさい」

「おやすみなさい」

「絵里さん、大好きです」

 油断している間に、心に染み入るような低い声がスマホから聞こえ、絵里が変な声をあげそうになったタイミングで、通話が切れた。

「どうしよ……。今までこんなふうに迫られたことがないから、対処の仕方が全然わからない」

 かくて恋愛音痴の絵里は、後日華代に泣いて縋り、相談に乗ってもらうことになったのだった。
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