小児科医の恋愛事情 ～ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ～

「連れてきてくれてありがとう。久しぶりにママと話せて、気持ちの整理もついたし」

彼女はスッキリとした表情を浮かべ、ふたりで車に戻った。
まだ１４時だし、家に帰るには少し早い。

「茉祐、これからどうする？　都心に戻るか･･もう少しこの辺走るか」

「祐一郎は、どうしたい？」

「え、俺？」

「うん。あ、でも『欲しい･･』はナシで･･」

恥ずかしそうにする彼女に、俺はプッと吹き出した。
今朝のことを思い出したのか。

「だって･･今日の祐一郎は、なんだかそう言いそうなんだもの」

「アハハ。ひとまず帰るか。茉祐は寝てていいぞ、まだ本調子じゃないからさ」

助手席の彼女の頭をポンポンと撫でた。

「あ、そうだ」

「ん？　何かしたいことあった？」

「いや、そうじゃなくて･･。
俺、茉祐のお母さんに言ったから。俺に、茉祐を任せてもらえますか？って。だから、これからは俺が････茉祐の保護者」

「えー、何それ～。私、祐一郎のムスメ？」

不服そうな彼女の反応を見ながら、俺は内心焦っていた。

とっさに『茉祐の保護者』という言葉に切り替えたけれど、あやうく『一生茉祐を守る』と言いそうになったからだ。
それはさすがにプロポーズの言葉だろ･･と、ギリギリのところで止めた。

プロポーズするなら、もう少し自分に自信をつけてから言いたかったのと。
まだ････あの男の話ができていないことが、どこかで引っかかっていたから。