小児科医の恋愛事情 ~ 俺を選んでよ…もっと大事にするから ~
もう、ひとりで辛い思いをさせたくなかった。
それが寂しさでも、身体の痛みでも、仕事の辛さでも。

「と言いつつ、癒されてるのは俺の方だけど・・」

単純に、家に足が向くようになった。
家に帰れば、彼女がいるのかと思うと。

お互いに仕事をしているし、時間が合わないこともあれば、家にいたとしてもずっと一緒というわけにはいかない。

それでも、お互いに帰ってくる場所がここで、声をかければ、手を伸ばせば届く安心感は想像以上だった。


風呂に入り、そろそろ寝ようとしていたところで寝室のドアが開く。

「祐一郎・・」

「んー、どうした?」

ベッドでタブレットを見ていた俺に、彼女が前から抱きついてくる。

「茉祐?」

「ちょっと充電・・今日、なんだか進みが悪くて・・」

「だったら・・思い切って寝る? 俺、明日の朝早いから5時半に起きる予定。その時間に起こそうか?」

「ん・・じゃあ、そうする。歯磨きしてくる」

さすがに毎晩同じことを言い続けていた効果なのか、頼ってくれるのが嬉しい。
モゾモゾと、彼女がベッドに潜り込んできた。

「ライト消すよ。おやすみ、茉祐」

「・・うん」

「どうした・・・・眠れそうにない?」

きゅっと俺のパジャマの裾を軽くつかむ。
これは、不安な時の彼女の合図だ。

不安の原因は、何だろうか。

「茉祐、もっとこっち来て」

彼女を近づけて、横になったまま後ろから緩く抱き締めた。

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