先生の隣にいたかった
入試会場に着くと、たくさんの受験生がいた。私は、今の家からは、少し遠い学校を受けることにした。だから、私の知り合いは誰もいなかった。
そのまま教室に入り、最後の確認で勉強をしている時だった。
「七瀬さんですか?」
突然声をかけられ、驚きを隠しつつ顔を上げると、先生らしき人が立っていた。
「はい、そうですけど」
「ありがとうございます」
そう言いながら、そのまま隣の席に行き、その人にも同じように名前を確認していた。おそらく、出席確認だろう。でも、なぜか私は、先生から目を離すことができなかった。先生に、名前を呼ばれただけなのに、心拍数が上がって、生まれて初めて、こんな気持ちになった。
でも、この気持ちが何かは私には分からなかった。その時までは。
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