私のお願い、届いてますか?

side 相村秀人

俺の言葉に動揺している梨々香を抱き寄せる。

自分でも、こんな甘えるような言葉を口にする日が来るなんて、正直驚いている。

俺の腕の中の梨々香の髪の毛から、付き合ってからずっと変わることのないシャンプーの香りが匂ってきて、心が満たされていく。





電話があった時、研究結果をまとめている最中だった。

珍しく着信があって、例の件もあったから、一度手を止めて電話に出ると、梨々香の声が震えていて、俺はいつもと様子が違うことを察した。

誰かにつけられてる…?

時計を見ると、人通りの少なくなっている時間帯で、胸がざわつき、すぐに血の気が引いていった。

稲山先生に事情を説明して、自転車を勢いよく走らせてる間も、不安で不安でたまらなかった。

コンビニのガラス越しに梨々香の姿を見つけた時に、心の底からホッとした。

でも、さっき帰ってきた時に、郵便物に混ざっていた、差出人の書いていない明らかに怪しい手紙を目にした時、再び俺の胸が騒ついた。

まだ玄関に梨々香がいることを確認して、すぐに中身を確認すると、決して梨々香の目に入れたくない文面と、隠し撮りと思われる梨々香の写真が3枚入っていた。

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