クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
「え、なんですかこれ……」
「ごめんなさい、苫さん」
界さんが意味深に笑う。
色白で俳優さながらの美形青年、界さん。
歳は26で、学生の頃から黒刃市の劇団に所属してるらしい。
キレイなお顔があまりにお手本のように笑うから、すっごく怖い。
ああ、人ってこんな絵に描いたようににっこりできるんだ、っていう不気味さ。
「俺の職業、知ってますよね?」
「……演出家」
「──見習いね。実際は雑用ですけど。……俺、苫さんと斑が主演助演をするって知ってから、ずっと考えてたことがあって。俺としては、どうしても最優秀作品賞を取ってもらいたいんですよね」
プロとしてのプライドなのかな。界さんは、西組の演技指導を請け負ってくれたから。
「それは、わたしも頑張ろうと思いますけど……。それとこれと、どう関係があるんですか?」
「聞きましたよ。大切なのは2人の関係……恋心なんですってね。つーことで、これも役作りの一環だと思って、ね?」
ね?と可愛く言われましても……。