クールな番犬くんは学園最強のオオカミでした
わたしはポケットからスマホを取りだして、アプリを起動した。
フレンド登録してバトルモードに切りかえたらレーススタート。
「そうだ。どうせならなにか賭けようぜ」
〈Ready〉ボタンをタップする前、1人がそんなことを口にした。
彼の口端には企みがにじんでいる。
「駆けって……お金ですか?」
彼は首を横に振った。
「負けたほうがガッコーやめる──ってのは?」
「え……」
「ハンデはやるよ。花姫は8位以内に入れたら勝ち。下位2位なら俺らの勝ちだ」
「……」
「インストールしてるってことは、やったことあるんだろ?なら下位2位を回避できるかもしれねーよ」
「……わかりました」
彼のあおりに乗ることにした。
ここで引いたら、彼らはもう、わたしの話を聞いてくれなくなるかもしれない。
「ただ、違うのを賭けてもらってもいいですか?」
「?」
「わたしが3位以内に入ったら、玉ねぎ切るの手伝ってください」
「玉ねぎ?なんだそれ。んー……まぁよくわかんねーけど、いいぜ。そんじゃ〈Ready〉だ」
彼のかけ声で〈Ready〉ボタンを押して、スタート。
3、2、1のカウントダウンを合図に、赤色のわたしの車はスタートダッシュを決めた。