花咲く街~旅立ったおにいちゃんへ~
プロローグ:俺は辛い...?のかもね
「あぁ、俺は辛い...?のかもね」
青山麻衣の兄青山幸太郎は、自宅の2階から窓を覗いて星を眺めていた。
『日々の少しのズレが重なって、やがて大きな絶望になる。その絶望が重なると、人は死に至る。つまり、自殺するってことなんだよね』
いつしか麻衣が、学校の友達から聞いたって言ってた。
「俺の命ももう終わりなのかな?」
毎日が辛いわけじゃないけど...日々の辛さは蓄積して溜まってきている。何に問題があるのかは、よくわからないけど辛いことは確かだから。
でも、麻衣の話には確か続きがあった。
『人間は死にかけたときに、走馬灯を見て命乞いをしようとする。走馬灯は死にかけのときに見るものだから、本当に見るのかはわからないけど。でも、麻衣はあると思う。だから人間は年をとるか病気になるかしなきゃ死ぬことはないと思う。きっと自殺なんてこの世界にはないんだよ』
あぁ、今思い出すと胸に刺さる。俺がこの世界から消えることを止めているかのように...あぁ、俺はどうすればいいんだ?

数ヶ月前、俺は高校から帰っている最中に一つの紙を落とした。
これは、うっかりではなくて自分で意図して落としたものだ。人は、究極に死にたくなると、『誰かにかまってもらいたい』という心理が働くらしい。おそらくこの行動も、その一環だろう。
たしかその紙には、

・・・・・・

この手紙を読んでいるあなたへ
今この手紙を書いている私は死にたいです。
日々を苦しんで生きて、今にも消えてしまいたいそんな思いでいます。
これを読んだ大半の人が、いたずらだと思い捨ててしまうことでしょう。
でも誰か一人でもいいから、この手紙を書いている僕を殺してください。
自殺ほう助ですので罪は軽いですから。
もし手伝ってくれるなら、
清水静岡高校内にて私、青山幸太郎を見つけて殺してください。
痛くない死に方でお願いします。では、さようなら。

・・・・・・

と書いたはずだ。
でも、これで俺が殺されたら犯人は自殺ほう助罪になるって警察官の、お父さんが言っていた。つまり、本来の殺人よりも罪が軽くなる。
ただ人というものは本来、相当な恨みなどがない限り、人を殺すことには至らないそうだ。大半の人が、本当に殺すことはできないから、未遂で止まることになる。
こうなってくると、この手紙を見つけてくれる人はいるのだろうか?早く殺してくれないだろうか、そんな思いばかりが頭によぎるようになる。
「とりあえず待つしかないか...」
そう言って青山幸太郎は眠りについた。
「お兄ちゃんご飯だよ!」
麻衣の元気な呼び声が、1階から聞こえた。2時間ほど寝ていたのだろうか?もうごはんの時間になったのだろう。
「あぁすぐに行くよ」
リビングに行くと、美味しそうな料理が、たくさん並べられていた。これがあるから、余計に自分が本当に、死にたいのかわからなくなる。
『シュー シュー』
お父さんが、壁に向けて殺虫剤をまいた。
これは、あとから聞いた話だが、普通に巻いておくよりも、染み込ませておくほうがいいらしい。誰が、そのような新しい発想をするのだろうか?まさか、僕じゃ…ありえないな。
もうすぐ死のうとしている人が、新しいことを始めるなんてありえない。
青山幸太郎は今日も、家族の目の前で嘘の明るさを見せていた。家族はまだ、これが裏の顔だということを知らない。
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop