if…運命の恋 番外編Ⅲ『愛に変わるとき』

「今の母と父はとても仲が良いと思うんですよ。・・でも
私の本当の母と父はどうだったのか、本当のところはわからないんです。
私の母は私を生んでから、私が幼い頃に亡くなったので・・」


「そうなのね、薫ちゃんを生んでくれたお母さまは、そんなに早くに?
 お母さまの事は覚えてるの?」

「本当に少しだけ、記憶がある位です。・・あっ、でもいつも
 愛はそう簡単に手放しちゃダメだって・・・お義母さまと同じ言葉を良く言っていましたよ」

「へぇ・・・私と同じ事を?」


「ええ・・・そうですね。お義母様が前に私にそう言って下さった時
母の言葉を思い出していました。まだ幼い私に・・ね、変ですよね?」


薫が思い出すように、母さんにそう言った
僕も父さんも薫と母さんの話を黙って聞いていた。

「お母さまは、大事なモノを手放したか、手放せなかったか・・なのね?
私はね、手放そうとしたのに・・・ちゃんと戻って来たのよ。
でも、あの時、戻って来なかったらずっと後悔しながら生きてたのかしらね」


「お義母さま、私も一度は手放してしまいました。
でも、戻って来てくれて・・私はお義母さまと同じですね」

「あ~ッ・・・そうねぇ」


僕と薫が部屋に戻ってから、両親がその後どんな話をしたのか
僕には想像できない。
母さんと薫の話の中で、父さんが何を思っていたのかも僕にはわからなかった。
ただ、母さんが父さんを一度は手放さそうとしたという事が
あったのかと・・・その事実を初めて聞かされた




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