さよなら、坂道、流れ星
「チズ。」
不意に昴に呼ばれたかと思うと、昴は千珠琉をギュッと抱き寄せた。
「すーく…昴?」
急なことにびっくりした千珠琉は昔の呼び方で呼びそうになって言い直した。
「俺、本当はすー君て呼ばれる方が好き。」
「え、な、何それ…」
昴の匂いがいつもよりずっと近い。千珠琉の心臓のリズムがますます早くなる。
「呼んでみて。」
昴が腕の中の千珠琉を見つめて言った。
「え」「む」「むりデス」
(昴、目つきがなんか…なんか…甘い…)
昴の醸し出す空気が急に甘くなったことにドギマギしてしまい、カタコトで答えた。
昴はそんな千珠琉を見て、ははっと笑った。
「チズ本当に真っ赤でおもしろい。」
「あ、またおもしろいって言った!」
真っ赤な顔でむくれて見せた。
「ごめんごめん。…でもこれで安心して東京行ける。」
「………。」
(そうだった、昴はもうすぐ引っ越しちゃうんだ…)
不慣れな様子で昴の背中に回していた千珠琉の手にぎゅ…と力が入った。
「す、すば…す、すー君…」
「ん?」
「私、絶対東京の大学に行くから。」
「うん。」
「そしたら、ずっと一緒にいて。」
「うん。待ってる。」
「すー君」
「うん?」
「願ってくれてありがとう。」
(ルルの時も、中二の時も、今も…ありがとう。)
そう言って、千珠琉は腕にぎゅーっと力を込めて、抱きついた。
「チズ、泣いてる?」
「なんか、嬉しいのと、離れ離れになるのがやっぱり寂しくて…なんか涙出ちゃうみたい…」
昴も少しだけ腕に力を入れた。
「チズが“会いたい”って声に出してくれたら、いつでも会いにくるから。」
「うん。じゃあ毎日お願いするね。」
そう言って、千珠琉は涙を零した顔で笑って見せた。

fin.
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