ひとりぼっちのさくらんぼ

ぼんやり立っていた。

ぼんやりしてたから。

走って渡った人がいて。



「青信号だって、勘違いしたんだ……」



そう言うと、耳に(よみがえ)ってきた。



『キキーーーッ!!!』



全身がぞくっとした。

寒気がして。

両腕で、思わず自分を抱きしめる。



「……J Kちゃん?」



「あたし……、車に……」



思わず生唾を飲む。

ごくり、と漫画みたいな音がした。



「……はねられたんだ!」



お姉さんは何も言わない。



「……そう、そうだよ、あたし、事故に遭ったんだった!!」



「ねぇ、J Kちゃん」
と、お姉さんがゆっくりこちらを見た。



「事故に遭って、あなたはあなたの時代で、目を覚ました記憶がある?」



あたしは首を振った。



「ううん……、そんな記憶、無いと思う。ものすごく曖昧だけど、でも、事故のあとの記憶って、今は思い出せない」



< 96 / 224 >

この作品をシェア

pagetop