錆びきった鐘は
今日のために気合を入れて結いた髪も、少しほつれていた。浴衣の袖が、ふんわりと夏の風になびく。


皆城くんがいなかったら、きっと私は今頃家で本でも読んでいたんじゃないかな。後で、お礼をいいたい。……いえたらいいな。



少し遠くの方で楽しそうな笑い声が聞こえる。暗くてよく見えないけれど、きっと皆城くんも楽しく花火をしているんだろう。



その距離が、どうしてか私には遠く感じてしまう。皆城くんは人気者で、クラスのムードメーカー的存在。


私が、そんな真夏の太陽みたいな彼と話しているのが未だに信じられなかった。


引っ込み思案な性格で、グループの皆とはうまく会話ができた自信もない。


こんな、なんにも取り柄のない私が、なんでここにいるんだろうか。とさえ思えてくる。



急に強くなった風でふわりとどこかへいってしまいそうな髪を軽く手で押さえたとき。
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