高嶺の花も恋をする【番外編追加】
「えっ!!嘘!佐伯に落ちたの?嘘でしょ...」

唖然とした顔の亜香里を見て不思議に思う。

「落ちた?佐伯くんに落ちたって......何?」

「あんた分からないの?好きになったんでしょ?って事。恋よ恋」

「私が?恋?....え?私、佐伯くんのこと好きなの?」

驚きの声を上げると、亜香里は呆れた顔を見せた。

「好きなの?って、そうでしょ?そうだよって私が言うのもおかしいけどさ。ドキドキしたんでしょ?佐伯に触れて、側で感じて」

「うん...そうだけど......。でも分からないもん。ドキドキして、胸がいっぱいになって。でも...これが恋なんて...」

「そうね。私の経験上、それを恋と言うのよ」

「これが.....恋」

つぶやく私に、亜香里は言いきかせるように言う。

「自分の感じたものをちゃんと確認してみれば?側にいれば感じるから。ちゃんと見れば、自分の気持ちも分かってくるよ」

「...うん」

亜香里に言われてちゃんと自分の気持ちを確認したくなった。

あのドキドキした鼓動も、身体が感じた熱も。

佐伯くんに私が落ちたからなのか。

恋?なの?

私・・佐伯くんを好き?

全部知りたくなった。

うん、うんと頷いている私にビールのジョッキを向けて乾杯を求める亜香里に、私もジョッキを向けて軽く当てた。

「いやー、佐伯か。かなりビックリだけど、莉緒の初恋に乾杯」

「乾杯」

「高嶺の花の初恋に、会社の男達は泣くわよ」

「泣くわけないじゃない。そもそも高嶺の花って何なのよ。高嶺でも花でも何でもないし」

「そりゃ〜、その美貌掲げていれば高嶺の花と言われても仕方ないでしょ。それに誰も莉緒が初恋すらした事なかったなんて知らないし。見た目だけで男関係充実してると思っているだろうし」

「そんなの仕方がないじゃない。そう思える人に出会った事なかったんだから.....」

「そうね。でもいいじゃない。その見た目で初心な莉緒、私は好きよ。レア物よ。あの佐伯だって喜ぶんじゃない?高嶺の花がまさか自分を好きになるなんて!てさ。まあ、莉緒は余計な事考えないで頑張れ」

ホレホレと唐揚げやら焼き鳥を皿に取り分けて私の前に置いてくれる。

でも今の私はそれを口にする事ができない。

「何か今日は私、胸がいっぱいで食べられない」

「ほーほー、そうですか。恋って素敵ね」

カラカラと笑いながら、食べられない私の目の前で美味しそうに食べ尽くす亜香里を眺め続けた。
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