身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く



香波との関係をどうしたいのかよくわからないまま、日々を過ごしている。
同居を始めて二週間が過ぎ、俺が起床する彼女も準備をし、朝食を作り始める。最近は朝は一緒に食べるのが日課になりつつある。

食事を終えると俺は身なりを整え、プライベートの連絡を確認する。香波もスーツに着替え、髪をまっすぐにセットして化粧をした。朝の準備で切り替わる香波の姿にはやっと慣れてきたが、濃い赤のリップをひいて戻ってくる瞬間は、今も胸が鳴る。

二種類のピアスを見比べて悩んでいる彼女の、スタイルのよさが際立ったミルクティー色のスーツ姿を盗み見る。やはり好みだ。同じような服装で仕事をする女性はいくらでもいるが、なぜか香波のことは特別魅力的に見える。気をつけていなければ手を伸ばしそうになる。

「あの……貴仁さん」

香波はピアスをつけて髪を耳に掛けながら、まだソファに座る俺を振り返る。

「私の料理がお口に合うようでしたら、夕食も一緒に食べませんか」

向き合うとまた心臓がうるさく音を立て始める。朝食だけではなく、香波の作る夕食には興味があった。何度か作っているのを見たことがあり、美味そうだった。食事はいらないと宣言した手前こちらからは言えずに外で済ませていた。
しかし食事まで共にしたら、俺たちは普通の夫婦と変わらない関係になるとふと思い、俺は黙る。香波は不安そうに返事を待っていた。
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