身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
香波のことを受け入れられないと感じるのは、今でも同じだ。俺が好きになったのは彼女ではなく花純で、きっかけはどうあれ今は丸く収まればいいという問題ではない。香波のせいで、俺の中の花純の存在が消えかかっていることも腹立たしくてならない。
香波は花純の代わりとして打算的に俺と関係を持ち、その後本当にうまく成り代わった。俺を侵食し始めたこの状況は、香波の思い通りになっている。なにもなかったかのように夫婦になろうなどとおかしな話だ。
「いらない。夕食は不要だと言っただろう。あと、お前の料理が口に合うと言ったか?」
憎らしさを込めて言い放ち、ソファを立った。彼女の横を通り過ぎ、荷物を持って部屋を出る。
「……くそっ」
なぜ俺がこんな気分にならないといけないんだ。そんな傷ついた顔をされても、彼女の自業自得だろう。俺が胸を痛める必要などないのに、すれ違う俺に泣きそうな顔で「すみません」とつぶやいた彼女を抱き寄せてしまいそうだった。