身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
気にしてはならないと自分に言い聞かせ出社し、予定していた会議や接待を終えた。
専務室へ戻るとシーナ製紙から急なアポイントが入ったと秘書から聞かされ、「誰から?」と詳細を尋ねる。
「副社長の三橋様と、ご令嬢の花純様です」
予想外なふたりからのアポイントに、俺は「は?」と声が出た。副社長とは面識がない。いや、椎名社長とセットでどこかで挨拶を交わしているはずだが、いつもの通り顔は記憶に残らない。名前は名簿を見ているから微かに覚えており、たしか三橋光汰。字面を思い出して初めて、花純が電話口で漏らしていた婚約者の名前だと気づいた。
「……ふたりだけで? 社長は?」
「今回は社長ではなく三橋様より直接ご連絡がありました。本日これから、内密にお話ししたいと」
なんの用だ。花純の婚約者と顔を合わせたくなどないのだが。しかし婚約者とセットであれ、もう一度花純に会えるというのに、俺はそれでも鬱陶しさの方が勝った。