身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く

父は花純の肩に手を置き、まるでこの話で一番知らせたかったのはここなんだと言わんばかりに明るく告げた。

「光汰さん……!」

胸を押えた花純が私へ寄りかかってくる。よかった……! やっぱり三橋さんはいい人だ。

「花純にも一応確認しておくよ。柊専務との婚約話は断って、光汰くんとの交際を続けるということでいいね?」

「もちろんよ!」

我が家のおとぎ話のようなリビングは、再び幸せな空気に包まれた。
まったく、驚かせないでよ。惚れっぽい御曹司が弱みにつけ込んで婚約話を持ち掛けてきたけれど、花純たちの愛はそんなことには負けなかった、っていうハッピーエンドだ。

しかし私は、父がほんの一瞬だけ、悲しそうな顔をしたのを見逃さなかった。抱き合って喜ぶ私たちに見せないように、母も笑顔のまま父の背中を擦っている。
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