身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「こんなことをされては困ります。そちらからしたらちょっとしたいたずらでも、花純はすごく怖い思いをするんですよ」
「……え?」
「花純の知り合いですか? それとも、今日たまたま見かけただけですか?」
男性は表情を歪ませたまま数秒沈黙し、私を見つめていた。負けじと見つめ返すと、彼の目は鋭くなる。
「ずっと好きだったんです……」
彼はボソリとつぶやき、私の手首を掴んだ。路地の壁に押し付けられ、さすがに「ヒッ」と小さく悲鳴を上げる。
「僕、シーナ製紙の社員です。入社したとき、社内で迷っていたところを香波さんに道案内してもらいました。覚えていませんか」
そう言われ、じっと彼を観察して思い出そうとするが覚えてはいなかった。その程度の親切は特別なことではないし、正直彼以外にもたくさんしていると思う。ん? というか、そうすると、この人がずっと好きだった人って……?
「あれからずっと香波さんのことが好きでした」
「……わ、私?」