身代わり婚のはずが冷徹御曹司は一途愛を注ぎ貫く
「結婚してしまったと聞いて、信じられなくて」
憔悴した様子の男性が心配になりながらも、大の男の人にこうして迫られると圧迫感がある。少し不安を感じて胸板を押し返そうとしたが、気弱に見えるのにびくともせず、初めてこの状況に恐怖を感じた。
「あ、あの、ごめんなさい。ご存知の通り結婚していますし、気持ちには応えられません……」
「政略結婚だって噂じゃないですか。そんな男が香波さんを幸せにできるはずない。僕の方が、ずっとあなたを愛しています」
「え、やだ、ちょっと……!」
頬に触れられ、ゾワリと背筋が凍る。乱暴ではないのにまったく抗えない。言い負かして追い返せると思ったのに、力が強くて全然敵わない。
「やめてください……! あなたは私の跡をつけていただけじゃないですか! 今さらそんなこと言われたって」
「好きでもない相手との結婚から僕が救ってあげます」
話が通じない。話せばわかってもらえるかと思ったが、やはり家までストーキングしていた時点でもっと警戒すべき人だった。目が虚ろな彼には、私の言葉が響く気配がない。