政略結婚から始める熱愛偽装
白金家の生粋のお嬢様は、幼少期の頃からお茶にお琴、生け花に数カ国の外国語を学習し、とても有能な女性へと成長は致しましたが…彼女も政宗同様に、実家では家事の一切を手に付けた経験は無く…。
実家の母から嫁入り用で頂いたプレゼントのエプロンは、可憐な娘にぴったりな鮮やかな花柄の生地だ。
それを空いた隣の背凭れに掛けて着席すれば、軽装に着替えて戻ってきた政宗の動きを密かに観察する。
「いただきます。」と手を揃えた政宗は、まず初めにスプーンを手にし、カレーを口に含ませる。
まあ何も言う事なしの百点満点の味わいだ。
政宗は安心して、次はいつもと違った歪な盛り付けのサラダを食べようと箸に持ち替えた。
すると斜め向かいから感じる熱い視線に気付いてしまう。
直前で箸を止め、雪乃の方を向けば…
「どうぞ食べて?」と妙に御機嫌である。
「ああ…。」と恐る恐るレタスをひとかけ持ち上げて口に運ぶと、初めの咀嚼でガリガリとした不快感を得た。
ん⁉︎と、政宗は咄嗟に手のひらに吐き出し、何も無くなった筈の口の中を舌で確かめる。
ジャリジャリ…ジャリジャリ…。
「どうかした?」
「いや、砂が…。」
「え、本当に⁉︎あらやだ…せっかく作ったのに、」
雪乃痛恨のミス…野菜はしっかり洗いましょう。本日より教訓となる。
そして雪乃の発言で、政宗はこのサラダが嫁の初手料理だと気付くのである。