政略結婚から始める熱愛偽装
結局のところ、雪乃の意向でサラダはそのまま残す事になった。
随分と静かな食事を終え、後片付けを始めた両者は、真っさらになったテーブルに再び集まる。
「…さて、妻は旦那に料理を作る。これは見事クリアね。」
「ん、どこが。」
昨夜の某会議と同様に、険しい顔したこの夫婦。
世間が思い描く世紀のビッグカップルは、華やかだが厳しい家元を離れ、人間味のある生活を送っているのだと勝手に想像し続けている。
「今日は趣味の時間を削り、嫁が待つ家に直帰してきたぞ。」
「言い方が気に食わないけど、まあ良しとしましょう。」
互いが調べた夫婦の意味。共働きの癖に、専業主婦の仮定の動きをしてしまうアホ二名…。
両者共に、本日成し遂げた報告会を繰り広げて、何故か御満悦なのである。
「あ、言い忘れてた。」
「なにを…」
「お風呂にする?ご飯にする?それとも私にする?」
「やっぱりそれはお約束なのか?飯は食ったし、風呂に入って読書したいんだが」
至って真顔で繰り広げられるこの劇場。この夫婦は大真面目なのである。