銀色ネコの憂鬱
「ふーん…」
蓮司は不機嫌そうな顔になった。
「でもさー、その“アユさん”は俺のファンなんだから、俺の方が世界一ってことじゃない?」
「え…うーん…一澤さんと香魚さんはジャンルが違うっていうか…」
菫は真剣に考えて言った。
「まあいいや、俺の商品が発売になったら“アユさん”より売れるし。」
「ぜひそうなってください。こちらも尽力します。」
明石が苦笑いで言った。
「明石さん。」
蓮司が言った。
「はい。」
「あんたが言ったみたいに、もっと…言ってしまえば金額的においしい契約の話もあるんだけど、スミレちゃんが俺の個展に来たことがあるとか、明石さんの奥さんが昔のインタビューのこと覚えてるとか…そういう会社は初めてだから。だからあんたのとこと契約するし、ちゃんと仕事する。よろしくお願いします。」
そう言って、蓮司は立ち上がって右手を差し出した。明石も立ち上がって握手をした。
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「スミレちゃんも握手する?」
蓮司が笑って言った。
菫はぶんぶんと首を横に振った。

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