銀色ネコの憂鬱
「え!?そんな、まだ何もお伝えしてないんですけど…」
「だって俺今スランプで何にも描けないんだもん。」
蓮司はあっさりと言った。
(もん…)
菫は自分が想像していた人物とだいぶ違う蓮司にやや圧倒されていた。
「あの…そういう理由でしたら…弊社としては描き下ろしはしていただかなくて大丈夫なので、ご検討いただけませんか?」
「新しく描かなくていいってこと?」
菫は(うなず)いた。
「最初なのですでに発表されている作品で人気のものを教えていただいて、それを中心に商品化させていただきたいです。」
「へぇ。」
「デザインの編集…えっと…レイアウトとかトリミングとか、そういうパソコン作業は弊社のデザイナーが行うこともできますし、一澤さんのご希望があればご自身でやっていただいても…あ、まず先に今回の契約の条件ですが…」
菫が契約の内容も含めて一通り説明して、クリアファイルに入れた契約書類を蓮司に差し出した。
「弊社の印鑑はもう押してあるので。内容をよく読んでいただいて…」
「んーなんか俺そういう話苦手で頭入ってこない。とりあえずアトリエいこっか。作品見ながらの方が話しやすいでしょ。」
蓮司が言った。
「アトリエ?」
「うん。すぐ近くだから歩いて行けるよ。」
< 4 / 101 >

この作品をシェア

pagetop