銀色ネコの憂鬱
「って感じで一澤さんの商品、大大大好評でした!展示会の売り上げが目標の120%だったんですよ!」
「それはなにより…で、なんでここにいんの?」
土曜日、菫は蓮司のアトリエにいた。
「今日は仕事が休みなので…」
「俺が言った意味わかってないの?」
「それは…でも…最初にいつでも来ていいって…言ってたし…」

———はぁ…

蓮司は溜息を()いた。
「わかってるよ、スマイリーに会いに来たんだよね。ったく、休めるようにしてあげてんのに。」
蓮司がボヤくように言った。
「………」
(…今日はスマイリーより、一澤さんに展示会の報告したい気持ちが強かったかも。)
蓮司の前で泣きながら明石への気持ちを吐露(とろ)して以来、菫は蓮司に対して心の壁のようなものが無くなったと感じていた。
「…ここに来た方が疲れが取れる気がします…。」
菫が呟くように言った。
「へぇ。それって、スマイリーだけの力?」
蓮司がニヤッとして聞いた。
「……その顔、()です…。」
菫はぶすっとした顔になった。
「…けど、一澤さんとお話しするのも…最近ちょっとだけ楽しいです。」
「ちょっと、ね。」
「ほんのちょっと、です。」
菫の素直じゃない言い方に蓮司は笑った。
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