銀色ネコの憂鬱
時刻は昼を回っていた。
「スミレちゃん会社大丈夫?」
「……無断欠勤…です…」
菫はあきらめたように言った。
菫のスマホには会社からの着信履歴が何件か残っていた。
『業務に支障が出たら契約解除だからね』
明石に言われている。
(…商談、すっぽかしちゃった…)
「今から行って謝るしかないよ。」
菫が言った。
「俺も行こうか?」
「ううん、ここに来たのは自分の意思だし、冷静になれば電話するタイミングもあったし…」
菫は落ち込んだ表情で会社に向かった。

ミモザカンパニー
「本当に申し訳ありません。」
菫は明石に頭を下げていた。
「事情はわかったけど…今回の場合は連絡できたはずだから、完全に川井さんの落ち度だよ。」
「はい。」
「うちみたいな小さい新参の会社は、どんなに小さな店舗でも、一回一回の商談が大事だって…川井さんは理解してるでしょ。」
「はい…」
「いつも言ってるけど…基本的にプライベートは自由だよ。だけど、仕事に支障が出るようなことは恋愛だろうが友達付き合いだろうがやめてほしい。今回みたいなことがあると、社長としては処分も考えなくちゃいけないし…」
「処分………」
「川井さんとは4年間…ピーコックも合わせたら5年か…長いようで短かった気もするね」
菫の顔が青くなった。
(…クビ…)
「しゃ、社長…あの…」
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