銀色ネコの憂鬱
その後、香魚子と明石はギャラリーで作品を見た。
「うちの商品もすごく売れてて、追加納品した方がいいかもです。」
「じゃあ明日手配しようか。何が人気?」
「えっと…」
菫と明石は仕事の話をしている。個展の物販では、ミモザカンパニーの商品も販売している。
「あの…」
香魚子が蓮司に話しかけた。
「菫ちゃんと結婚するんですか?左手の指輪…」
香魚子がこそっと聞いた。菫は照れ臭くてまだ誰にも言っていないと蓮司に言っていた。
「さすが、よく見てる…。」
蓮司は(うなず)いた。香魚子はにこにこと微笑んだ。
「菫ちゃん、とっても良い子ですよね。」
「はい。」
「菫ちゃんの言葉には裏がなくて真っ直ぐだから、褒めてくれたらそのまま全部、力になるっていうか…」
「はい。」
蓮司は優しく笑った。
「私、あの二人…(あまね)さんと菫ちゃんがいたから今でもデザインの仕事できてるんです。だから、菫ちゃんが幸せそうにしてると嬉しくって。」
「俺も。俺もスミレちゃんがいなかったら、もう描いてなかったかも。」
そう言って菫をみつめる蓮司に香魚子は微笑んだ。
「お互い惚気(のろけ)ちゃいましたね。」

香魚子と明石はギャラリーを後にした。
「香魚さんと何話してたの?」
菫が聞いた。
「ナイショ。」
蓮司が言った。
「俺もアユさん好き。」
「え!」
「スミレちゃんとはジャンルが違うけどね。」
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