俺様社長は純情な田舎娘を溺愛する 〜その後のエピソード〜

どこだ？

本屋は広く、喫茶店の様なブースもある為、果穂を直ぐに見つける事が出来ない。

スマホを鳴らしてみるが応答が無い。

気持ちだけが焦る。

なぜ彼女に対してはここまでも心配になるのか自分自身でも呆れてしまうほどだ。

早足で、店内を移動しながら果穂を探す。
店の片隅にある閲覧コーナーで彼女を見つけて安堵する。

「果穂。」
呼びかけると、顔を上げてキョロキョロと辺りを見渡す仕草が可愛い。

俺を見つけて、手を振って近付いてくる。

「お疲れ様、ごめんなさい。
夢中になって読んでしまって連絡くれた？」

「ああ、良かった、見つけられて。」
抱きしめたくなる衝動を抑え、彼女の髪に優しく触れるだけに止まる。

「近くの定食屋に行こう。」
果穂は一冊の本を買って、手を繋いで本屋を出る。

「前に言ってたところ？
他の社員さんもいるんじゃないの？」
心配して果穂が聞く。

「個室を予約してあるから大丈夫。
それに、夫婦なんだから堂々としてればいいんじゃないか？」
誰に見られても夫婦なんだからもっと、
堂々としていたい。

「でも、私が奥さんだって知れたら翔さんが悪く言われないか心配…。」

「俺は、自慢して回りたいくらいなんだけど。誰にも取られたく無いから牽制して回りたい。」

「本気ですか⁉︎」

「至って本気だ。
丁度明日、シンポジウムの後に親睦会があるんだ。果穂も一緒に出ないか？
その事を伝えたくて今日はランチに誘ったんだ。」
店に向かいながら、果穂に話す。

「えっ…、明日⁉︎」
果穂から戸惑いを感じ、翔は冷静に話しかける。

「心配しなくても、気楽な感じのパーティーだ。
若手の起業家が集まるから同世代が多いし、果穂が思うより緩い感じの集まりだよ。」
安心させたくてそう言う。

しばし考えている様で果穂が無言になる。