契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


「私、柚希の生い立ち聞いてからね、サイレントベビーって何度か調べたの。サイレントベビーって成長すると自分の意見が言えない性格に育ったりするらしくて、だから、シフト変更を急に頼まれても笑顔で受け入れるところとか少し不安に思って見てたの。正直、有沢さんとのことも、最初はただ断れなかったんじゃないかって疑ってた」

蘭の言葉に驚く。
だって蘭は、私が過去の話をしても、それを知る前と態度を少しも変えなかった。だから、そんなふうに気にして心配してくれていたのかとビックリして……でも、すぐに、ああそうかと納得した。

『でもさ、正直なところ、戸籍にバツがつくわけじゃん。ちょっとためらったりしなかった? 本当によかったの?』

そう聞いてきたときの蘭は、私の気持ちを探るように慎重な眼差しを向けていた。
私の知らないところで気にかけてくれていたんだなと嬉しくなりながら微笑む。

「そうなんだ」
「うん。でも、そうやって〝伝えたい〟って思えてる柚希に安心した。叫んだり泣いたりしてもいいんだって柚希に思わせてくれた大人が周りにいたってことだし、よかったよ」
「うん。旅館だったから、従業員だったりお客様だったり、周りにたくさん大人がいたし、甘えさせて構ってくれてたから」

生まれてきたくなかっただとか、消えてなくなりたいだとか、沈んだ時期はあったにしても、そのうちに反骨精神も生まれたし、雄二さんたちが『柚希はなにも悪くない』って繰り返し教え込んでくれたおかげで、自分を責めることもなくなった。
それに、今は。

「蘭が心配してくれるから、ちゃんと叫ぶし泣くよ」

目を細めて言った私に、蘭は満足そうに笑う。


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