契約夫婦なのに、スパダリ御曹司は至極の愛を注ぎ続ける


いつも通りの普通の態度だった。
じゃあ、さっきのは本当にただの訓練的なものだったのだろうか。

あのとき流れていた雰囲気には、もっと違う種類のものが含まれていた気がしたのだけれど……私の気のせい?

でも、そもそも初恋もまだの私が、そんな細かい機微を解読できるはずもないし考えたところで答えなんてでないだろう。
じゃあ、まぁ、悠介の言う通りでいいか。

深追いして考えたところで、無駄なだけだってことは、こんな生い立ちを持っているだけによく知っていた。

〝どうして父親は不倫なんてしたんだろう〟
〝どうして私は親に大事にしてもらえないのだろう〟
〝どうして──〟

全部全部、考えたところで時間の無駄で、心の負担にしかならないのだ。

……あれ。もしかしたら、〝どうして〟を追及しないから、私は初恋もまだなのだろうか。たまに感じていた緊張や胸の弾みの理由を深く考えていったら、恋に辿り着くこともあったのだろうか。

落ち込みたくなくて〝まぁ、いいや〟と割り切り、余裕がなくて〝もう、いいや〟と早々に切り捨ててきたものの中には、大事な初恋もあったりして。

そんな今更すぎる可能性が突如生まれ苦笑いを浮かべながらも、やっぱり〝まぁ、もういいや〟と割り切り、お風呂に入るために湯船にお湯を溜め始めたのだった。






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