もう一度、重なる手

「ううん、ごめん……。せっかく一緒に見てたのに」

 目を擦りながら首を横に振ると、アツくんが映画を一時停止する。

「眠いなら無理しなくてもいいよ。続きは明日見ればいいし」

「でも……」

「それに、俺もフミとの距離が近すぎて、いまいち内容が頭に入ってきてなかったし」

 甘い声でささやかれ、閉じかけた瞼にキスされて、ドクンと心臓が鳴った。

 一瞬前まで眠くてウトウトしていたのに、瞼に触れたアツくんの唇の熱さで眠気が吹き飛んでしまう。

「やっぱり、続き見れるかも……」

 顔を赤くしながら、間近に迫るアツくんの唇を手で押さえたら、その手をつかまえられた。

「ほんとうに?」

 私の手のひらに口付けながら、アツくんが上目遣いに見てくる。

 映画を見るために照明を暗くした部屋で、濡れたように揺れるアツくんの瞳。その瞳にジッと見つめられるだけで、身体が熱くなった。

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