もう一度、重なる手

「いいかどうかじゃなくて、どうしたいかはフミが決めていいんだよ。俺は、またフミと一緒に住めたらいいなって思うから誘ってる」

「私が……」

「そうだよ。フミが一緒に暮らしてくれるなら、もうちょっと広い部屋に引っ越そっか。ベッドがロフトにある部屋じゃ、フミのこと簡単に押し倒せないし」

 アツくんが冗談交じりに笑って額にキスをしてくる。

「またからかって……」

 顔を赤くして目を伏せると、アツくんがそっと私の髪を撫でてきた。

「からかってないし、フミはゆっくり考えてから決めてくれたらいいよ。返事は急がないから」

「え……?」

 視線をあげた私に、アツくんが優しく微笑みかけてくる。

「その代わり、一緒に住んだら、俺はもう一生フミのこと手放すつもりはないよ」

 一生——?

 アツくんの言葉を頭の中で反芻する。しばらくして、その真意に気付くと、私の心音が徐々に加速していった。
< 186 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop