もう一度、重なる手

「わかった?」

 優しいけれど、有無を言わせない声音で念を押されて、流されるままにコクンと頷く。

 具体的なことは訊いてこなかったけど、アツくんは悩み事をしていた私のことを心配してくれているんだろう。

 翔吾くんとのことは話せないけど、「絶対にフミの味方だ」というアツくんの言葉が嬉しい。

「ありがとう、アツくん。ほんとうに困ったことが起きたら、そのときはちゃんと話す」

「約束だよ?」

「うん、約束」

 もう一度しっかりと頷くと、アツくんがようやく文庫本から手を離してくれた。

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