もう一度、重なる手

◇◇◇

 母の家から帰宅すると一番に、私はリビングのビーズクッションにダイブした。

「はあ、疲れた……」

 ため息を吐きながら、クッションに顔を埋める。圧迫するような息苦しさが、疲れた体に妙に心地よかった。

 母から食材の買い出しと夕飯作りを頼まれた私は、結局他にもいろいろと雑用を押し付けられ。母と山本さんが食べる一週間分のおかずまで作り置きさせられた。

 食べやすいようにタッパーに小分けにして冷蔵庫に保管までしてあげたのに、母は私が料理を作っている横で「この食材は嫌いだ」とか「その味付けは彼が気に入らないかもしれない」とか、何かにつけて文句ばかりつけてきた。

 気に入らないなら、自分で作ればいいのに。

 人に頼んでおいて文句ばかり言う母に、心の底から嫌気がさした。

 できればもうしばらく、母の顔は見たくない。

 ふーっとため息を吐いたあと、クッションの上でゴロンと仰向けに寝転がる。

 やる気なくクリーム色の天井を眺めながら、そういえば母の状況を翔吾くんとアツくんに連絡しておかないと、と思った。
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