もう一度、重なる手
◇◇◇
「あ、史ちゃん。おかえりなさい」
アツくんとのランチタイムを終えてオフィスに戻ると、隣の席に座っている由紀恵さんがパソコンから顔をあげた。
「お疲れさまです。今日は先にお昼をとらせてもらってありがとうございました」
「いいの、いいの。それより、小田くんとは会えた?」
デスクに座ろうとする私に、由紀恵さんがこそっと囁いてくる。
「え、翔吾くんですか?」
きょとんと首を傾げると、由紀恵さんが「え、連絡こなかった?」と意外そうにまばたきをした。
「史ちゃんが休憩に出たあと三十分くらいして、小田くんが営業回りのあいさつに来たんだよ。ちょうど同じビルの取引先のところに来たのでごあいさつだけーって」
「そうなんですね。私のところにはなにも……」
「そうなの? 帰り際に史ちゃんのことをなんとなく気にしてるふうだったから、休憩出てるよって教えたんだけどな」
「そう、ですか……」
由紀恵さんの話が気になってスマホをチェックしてみたけど、翔吾くんからはなんの連絡もきていない。
〈さっき、うちの会社に来てたの?〉
念のためにラインを入れてみたけど、もちろんすぐに返事はこない。