エリート国際弁護士に愛されてますが、身ごもるわけにはいきません
大和もすぐに理解したようで、呆然と手の中にあるピル、すなわち避妊薬を凝視したまま固まっている。
瑠衣はそれを奪い返すこともできず、考え得る最悪のタイミングで知られてしまったと、頭の中は真っ白だった。
「あの、それは……」
きちんと説明しなくてはと思えば思うほど、焦って言葉がでてこない。
すると、ゆっくりと顔を上げた大和が、引き結んでいた唇をわななかせながら、聞き取りにくいほど低い声を出した。
「俺との子供ができたら困ることでもあるのか」
大和は怒りを必死に抑えているかのような冷たい表情だが、瞳には哀しみの色が滲んでいる。
(違う……! そんな顔をさせたいわけじゃない)
必死に首を横に振って否定するのを見ても、彼の表情は変わらない。
「佐藤孝弘。大学卒業後に起業したIT会社の社長。君の元恋人だよな?」
突然、なんの感情も見えない声音でそう尋ねてきた。
佐藤の名前が出てきたことにも、その情報を大和が知っていることにも驚き、瑠衣は目を丸くする。
答えを必要としているわけじゃないのか、瑠衣が口を挟む前に再び大和が話しだした。